痔核(いぼ痔)

一般に「いぼ痔」といわれるもので肛門の外側に発生するもの(外痔核)と内側に発生するもの(内痔核)があります。

痔核は肛門の静脈が怒張して球状に膨れたものがその本体です。言うなれば肛門静脈瘤なのです。したがって、皮膚にできる「いぼ」とは、同じいぼと言われても全く異なる別物なのです。往々にして遺伝性の体質によって肛門の静脈瘤が出来やすい人が存在します。このような体質とは、肛門部の静脈の血流が流れが悪くうっ血しやすいため、静脈の内圧が高くなり、静脈壁を内部から押し広げて球状のふくれ、すなわち痔核を発育させてしまうのです。

 痔核は出来る場所により、皮膚下に出来る外痔と粘膜下に出来る内痔に大別されます。おおむね時間に比例して成長し続けますが、女性の場合は、妊娠中に加速度的に成長して、急速に症状が現れることがまま見られます。痔核の成長の早い人遅い人とまちまちですが、個人の排便や飲酒などの生活習慣による違いもさることながら、成長速度の違いは、遺伝的な素因が大きいものなのです

■外痔

肛門の縁の部分に出来ます。ただ存在しているだけでは気付きませんが、突然激しい痛みを伴い肛門の縁にしこり状のかたまりとして感じます。これが外痔に血液が固まってつまった血栓性外痔核です。多くの場合、いつも以上に下痢が続いた・便秘をして苦労した・アルコールを飲みすぎた・非常に長く座っていた・激しい運動したなど があります。

 

症状 
 排便に関係なく出血し、腫れて痛む
 突然お尻が痛みだし、肛門の出口にいぼが出てきた

 

治療

1、薬による治療
 ごく軽い症状に使用します。対症的治療に他なりませんが、かなり進んだものでも、痛みなどの急性症状の消退には有効です。

2、日帰り手術
 血栓を生じて硬く腫れて痛むものなど血栓除去を行います。この手術は数分で終了します。また、ある程度大きい血栓を形成した外痔は切除を行います。日帰り手術で行うため、通院で可能です。

 

■内痔

小さいうちは何の自覚症状も有りませんが、やや大きくなると排便する時に痛みのない出血があり異常に気づく事が多いものです。しかし、肛門の内部にありますから姿が見えません。もっと大きくなると、肛門部を中から刺激して、肛門の違和感や残便感を感じるようになり、さらに大きくなると排便後に肛門外に出てくるようになります。こうなると内痔も脱肛と呼ばれます。
さらに、月日がたつうちに次第に全周性に出てきて常に出っぱなしとなり、また中に戻せなくなって激痛を来すこともしばしばです。脱肛と似たものに直腸脱と肛門ポリープがあります。また同じように粘膜が出てくるものにホワイトヘッド肛門(手術後症)が有ります

 

症状

 最近トイレが長くなった。
 排便時に痛みもないのに血がしたたり落ちた。
 便の外側に血がついていた。
 排便時にお尻がムズムズしてきて、いぼ痔が飛び出してきた。
 肛門に何かぶら下がった感じで、痛みはないが残便感がある。

内痔核:4段階分類

Ⅰ度:痔核はあるものの脱出はせず、症状は出血が主である。
Ⅱ度:排便時に脱出するが、排便後は自然に肛門内に戻る。
Ⅲ度:排便時に脱出して自然には肛門内に戻らず、指や手で肛門内に押し戻せる。
Ⅳ度:脱出したままとなり、肛門内に戻すことができない(脱肛)。

実際の痔核脱肛の写真と進行程度

内痔、外痔を実際に見たところです。それぞれがひとかたまりのブロックを形成しています。

さらに内痔が発育した例。痔核の立体感が増し相互に折り重なっている。

さらに進むと本来肛門内にある総ての痔核が脱出してきます。全脱肛と呼ばれます。

内痔がやや目立つ例

一層痔核が大きくなり、外に脱出した例です。こうなると脱肛と呼ばれます。

脱肛を生じているうちに、肛門の筋肉で締められて静脈の流れが止まり痔核内の血液が固まり、血栓を作った状態です。こうなると激痛を伴います。

内痔の治療

1、薬による治療
ごく軽いものに使用します。肛門の炎症の抑制、痛みの緩和、止血目的で坐薬、軟膏、内服薬を処方します。対症的治療に他なりませんが、かなり進んだものでも、痛みなどの急性症状の消退には有効です。また同時に生活習慣の改善指導も行います。

2、切らない治療 絶対的根治治療ではなく、再度痔核の出現を認めることも少なくありません。

(注射療法)
ジオン注射 
痔核に直接薬剤を注射することで、止血したり、硬化縮小させ脱出を無くすための治療法です
内痔核に対する新しい治療法で、手術療法に比べて痛みが少なく手術後の患者様の負担が少ないのが特徴です。ただし、痔核は残るため、再発がないわけではありません。また、特殊な注射法があり現在では、当院も含めた限られた手術でのみ施行が可能です。    詳しくは

(その他)
過去に冷凍療法、輪ゴム療法、PPH法、ICGもありますが、現在はあまり行われていません。

3、手術療法

程度の進んだ内痔核や脱肛は入院がベターです。腰椎麻酔で行うため翌朝まで歩行は出来ません。根治性の高い手術が行えます。入院期間は痔核の進行度や手術程度、個人の肛門管理能力によって3日~14日とまちまちです。また、根治を求めない方には、入院期間を短くした負担の少ない手術も可能ですのでご相談下さい。
現在の一般的な手術法は、別名「結さつ切除術」と呼ばれ、痔核を切除してその根部を糸で縫い締める手術です。肛門内には、主痔核と呼ばれる比較的大きな痔核が3個 あり、一般にはこの主痔核を3個同時に切除します。ところがこの主痔核と主痔核の間に副痔核と呼ばれるやや小型の痔核があるのです。この副痔核が将来成長してくる懸念を有しています。

 

当院では、痔核6ヶ所アタックを採用しています

当院では、この副痔核をも肛門上皮を切らないで消滅させる工夫を行っています。(痔核6カ所アタック)この手間のかかる手法によって、痔核の再発は飛躍的に減少します。この6カ所アタックが当院の誇るべき 根治手術の特徴です。これらも総て保険の範囲で行っていますので、一般的な単なる3ヶ所切除も、当院の6ヶ所アタックも料金的には全く同じです。なお、自然に溶ける糸を用いますので、抜糸はありません。解説図

←当院方式で丹念に副痔核までアタックした場合、3年経過しても痔核の再発を認めなかった例

(術後の再発について)
痔核手術では当院規格で痔核6ヶ所をアタックすれば再発は極めて少ないものになります。便通をきっちり管理すればほぼ一生大丈夫でしょう。反面、たとえば外来で1カ所を簡便に切除する安易な手術の場合、恐らく将来取り残した部分が再び症状を現します。