大腸憩室炎

大腸の壁の一部が弱くなり、腸の外側へポケット状に突き出したものを大腸憩室といい、内視鏡で観察すると、まるで蜂の巣のような窪みが見えます。
大腸憩室を持っている方はたくさんおられ、特に高齢者では半数以上の方に見つかるものなので、通常は心配する必要はありません。
この病気はほとんど無症状ですが、多数の憩室がある方だと腹痛の原因となることもあります。
まれに憩室に細菌が繁殖して腹痛や発熱を起こしたり(大腸憩室炎)、憩室から出血する(憩室出血)場合はあるため、治療が必要となります。

原因

従来、欧米では左側の大腸(S状結腸)に好発するのに対し、日本では右側結腸に多いといわれてきました。しかし、近年の食習慣や生活様式の欧米化に伴い、日本でも左側大腸の症例が増えています。

第一の原因として、大腸内圧の上昇があげられます。すなわち、最近の食生活の欧米化とともに、肉食が多く、食物繊維の摂取量が減少したため、便秘や腸管のれん縮、ひいては腸管内圧の上昇を起こしやすくなったと考えられています。

第二の原因として、加齢による腸管壁の脆弱化(ぜいじゃくか)があげられます。その他、体質、人種、遺伝、生活環境などの要因も複雑に作用し合って発生すると考えられます。

症状

ほとんどの方は自覚症状がありませんが、中には腹痛、発熱、下血などの症状が出ることがあり、その場合は大腸憩室症といわれています。何故、そのような症状が発症するかというと、袋の中に便が溜まり炎症をおこしたり、腸内圧の上昇や便が溜まる刺激で腸の壁の血管が傷ついてしまうためと考えられています。つまり、右側の大腸(上行結腸)に憩室がある場合は炎症が起きると右側の下腹にかけて痛みが出たり、左側の大腸(下行結腸からS 状結腸)に憩室がある場合は炎症が起きると左側の下腹にかけて痛みが発症します。

治療

普段から気をつけることは、動物性タンパクや脂肪を減らし、繊維質の多い食事を心がけ、便秘をしないよう、場合によっては下剤を飲むことも大切です。その他にも暴飲暴食、過労、ストレスを避けて生活することも重要です。
基本的には、症状が出なければそのまま経過観察をするということになりますが、憩室炎を起こすと腸が狭くなったり、癒着、穿孔や腹膜炎を起こすことがあるので注意が必要です。
また、出血を起こすような場合は、内視鏡治療や、血管塞栓術などの止血処置を必要とすることもあり、症状を繰り返す方や、症状のひどい方は外科的な手術が必要な場合があります。

大腸憩室を指摘されたことがある方は、常日頃から生活習慣に注意が必要ですが、万が一症状が出るような方は、早めに内科や外科にかかることをお勧めいたします。また、一般検診で便の中に血液が混ざる、時々なんとなくお腹が痛むという方は、大腸の検査をおすすめします。