便秘指導について

食べたらその分きちんと出す。健やかな体に欠かせない基本です。しかし、近年ではその自然なお通じのサイクルがスムーズに回らない人がどんどん増えています。たかが便秘と思われるかもしれませんが、放っておくと痔や大腸ガンなど、重大な疾患を招きかねません。当院では、患者さまお一人おひとりの状態に合わせて、生活指導、食事指導を行っております。薬については、副作用のない薬を処方していきますが、最終的にはお薬に頼らない自力排便が目標です。

便秘症について 

便秘は、各種の肛門疾患を増悪させる最大の要因の一つです。肛門の治療に際しては、決して無視できない問題なのです。 肛門の括約筋の力が正常である人に限って言えば、肛門に最も無理のない便の大きさは、大人の男性の親指ぐらいのサイズの便と言えます。おおむね、便の太さは、便の硬さに比例していますから、太い便は硬く、肛門を傷付けて、出血をきたしたり、痔核を外に押し出したりする働きにつながります。 毎日の排便を行うことはむろん大切ですが、大腸の水分吸収力の旺盛な人は、便の先端が特に硬くなりますから、一日に一回の排便より、夜に少しでも排便しておけば、翌日の排便の先端が比較的柔らかくなり、肛門に無理をかけなくて済みます。根気よく訓練を繰り返すことによって、夜も排便が行えるようになるものです。当院では、一日二回の親指の太さの排便を、「理想排便」と呼んでいます。

便秘症の種類 

器質的便秘

大腸の中にがんなどがあったり癒着による通過障害がある場合です。腹痛や腹満感がおもな症状で、便意(便をしたい感じ)はあまりでてきません。治療法は手術的な方法になります。

機能的便秘

1、習慣性便秘
 不規則な排便習慣が原因で、便意があっても排便をがまんする習慣を長期間続けているうちに肛門のちかくに便が来ても便意を感じなくなってしまった状態です。排便に必要な直腸の収縮が弱くなり排便が困難になります。肛門ちかくに長時間便を溜めないことが治療になります。浣腸が最も効果的ですが、排便習慣を正しくすることが重要です。朝食後30分以内が腸が一番よく動くのでこれを利用して排便するようにして下さい。 

2、弛緩性便秘

大腸のなかに便が多量に溜まっていても肛門ちかくまで便を送り込む腸管運動が弱くなっている状態です。習慣性便秘が慢性化した場合や長期間腸管刺激性下剤を飲み続けた場合などにみられます。
何日も排便がなく、腹部が張っても便意がなかなかでてきません。腹痛はあまり強くありません。
水分と食物繊維を大量にとることが大切ですが、これだけでは改善しないことも多いようです。

便秘症の対策 

1、水分補給

まず何といっても水分の摂取が大切です。便秘症の人は水分摂取が極めて少ないケースが多いのです。20度の気温で安静臥床時でも、人間が生きていく上に必要な水分は最低でも2リットルが必要なのです。気温が高く、活動していれば、更に多くの水分が必要なのは言うまでもありません。身体は不足する水分を生命維持のためどんどん便から吸収し、便がかちかちに硬くなっていくのです。

2、繊維の多い食べ物

野菜や果実などの繊維の多い食べ物をしっかり摂りましょう。近年食生活の欧米化がすすみ、肉類や動物性たんぱく質に偏った食事となり、野菜などの食物繊維摂取量が減っています。このことが、我が国の大腸癌(ガン)の急速な増加の大きな原因です。野菜中心の食事は、ガン予防のみならず、それ自体がスポンジのように水分を保持して便の硬度を下げ、便の量を増やして腸の動きを良くし便意を促進させます。その他、野菜中心の食事は低カロリーのため、肥満の予防にもなり、コレステロール値を下げ、ナトリウム(塩分)の吸収を妨げるため高血圧にも抑制的な効果があります。日本人の身体は粗末な菜食中心の何万年もの長い歴史の中で出来た体質です。そこへ急速に動物性の脂肪や蛋白の過剰な欧米の食生活が現れたわけで、我々の身体が順応しきれずにいます。日本人の成人の約半数が高脂血症をきたしている現実がそれを物語っています。

3、排便の習慣を!

朝早めに起きて、余裕をもってトイレに行くようにします。職場に遅刻するといった、イライラした気分では排便がうまくいきません。また、夜にも二回目の排便が得られる習慣を付けましょう。諦めずに排便に行くのだと言い聞かせて何回もトイレに行ってみるのです。一週間に一回でも夜に排便できるようになったら成功です。さらに根気よく毎夜排便が出来るように訓練をするのです。水分や食事の摂取の後は、胃腸が活発になるのでこのタイミングを逃さないようにトイレに行って下さい。

4、排便は大切な日常生活の一つ

排便が面倒臭いといった意識は絶対排除しましょう。排便はとても大切な日常生活の一つであるという認識を強く持つことが大切です。便意感が生じたら、すかさずトイレに行って下さい。我慢すると便意は消失し、その繰り返しによって、直腸から便の存在を脳へ伝え腸を動かす機構が麻痺してきて、直腸性便秘という状態になります。